今月読んだ本

今月(2022-10)読んだ本は5冊。

小説 すずめの戸締まり (角川文庫) 文庫 – 2022/8/24

「ねえ、すずめ―。あなたはこれからも誰かを大好きになるし、あなたを大好きになってくれる誰かとも、たくさん出会う。今は真っ暗闇に見えるかもしれないけれど、いつか必ず朝が来る」

あとがきより

アニメーションを作りながら、小説を書きながら、子供を育てながら、ずっと頭にあったのはあのとき感じた思いだった。なぜ。どうして。なぜあの人が。なぜ自分ではなく。このままですむのか。このまま逃げ切れるのか。知らないふりをし続けていたのか。どうすれば。どうしていれば。ーそんなことを際限なく考え続けてしまうことと、アニメーション映画を作ることが、いつの間にかほとんど同じ作業になっていた。あの後も世界が書き換わってしまうような瞬間を何度か目にしてきたけれど、自分のそこに流れる音は、2011年に固着してしまったような気がしている。

押井守のサブぃカルチャー70年 (Bros.books) 単行本(ソフトカバー) – 2022/5/2

光学迷彩を着た素子がビルから飛び降りるとき、顔を隠すのは、自分で自分の存在を消し去るという意味だったんです。
わたしが『ビューティフル・ドリーマー』で一番気に入っているのが、明るく不条理をやっているところなんです。

押井守監督がFラン大学就職チャンネルを好きなエピソード何回聞いても良い。

いまは人が分断されて生きている時代じゃない?若者の多くは、遊び仲間はいるけど悩みや人生を相談する人はいないんです。そういう友人がいないのもかかわらず、ちょっとした問題に突き当たった場合、ちゃんと調べもしないからね。ネットをいつも見ているくせに、そういうところを調べようとはしないんだよ。
なぜかといえば、自分の人生に当事者意識がないから。関係ないと思っているから、めんどくさいから、どうせダメだと諦めているから。それこそYouTubeを眺めていたほうがいいから。
そういう姿勢でYouTubeを眺めている連中に「Fラン)は、そのYouTubeを通して語り掛けている。そこも面白いんですよ。

人新世の「資本論」 (集英社新書) Kindle版

はじめにの【SDGsは「大衆のアヘン」である】がとてもよかった

温暖化対策をしていると思い込むことで、真に必要とされているもっと大胆なアクションを起こさなくなってしまうからだ。良心の呵責から逃れ、現実の危機から目を即けることを許す「免罪符」として機能する消費行動は、資本の側が環境配慮を装って私たちを欺くグリーン・ウォッシュにいとも簡単に取り込まれてしまう。
新たな贅沢さを求めて、現実に目を向けてみよう。すると気がつくはずだ。世の中は。経済成長のための「構造改革」が繰り返されることによって、むしろ、ますます経済格差、貧困や緊縮が溢れるようになっている、と。実際、世界で最も裕福な資本家二十六人は、貧困層八三億人(世界人口の約半分)の総資産と同額の富を独占している。
これは偶然だろうか。いや、こう考えるべきではないか。資本主義ことそが希少性を生み出すシステムだというふうに。
資本主義のもとでの労働者たちの代わりはいくらでもいる。労働者は、首になった、仕事が見つからなければ、究極的には餓え死にしてしまう。
マルクスはこの不安定さを「絶対的貧困」と呼んだ。「絶対的貧困」という表現には、資本主義が高級的な欠乏と希少性を生み出すシステムであることが凝縮されている。本書の言葉を使えば、「絶対的希少性」が貧困の原因である。
『資本論』に秘められた真の構想があるのだ。
この構想は、大きく五点にまとめられる。「使用価値経済への転換」、「労働時間の短縮」、「画一的な分業の廃止」、「生産過程の民主化」、そして「エッセンシャル・ワークの重視」である。
Written on October 31, 2022